ダイヤモンドを日本語で金剛石(金剛とは、極めて硬いもの・金属という意味)というように、硬いという事はダイヤモンドのもっとも知られた性質であると言えます。しかし、トップページで紹介したとおり、その硬さはもろい硬さでもあります。このように、ダイヤモンドは大変よく知られている鉱石であるのに、その性質についてはあまり知られていないという不思議な鉱石です。まずはこのダイヤモンドの性質についてお話していきましょう。
モース硬度とは
「ダイヤモンドの硬さ」を紹介する上で、先に紹介しておかなければならないのがこのモース硬度というもの。これは主に鉱物の硬さを判断する一つの基準で、AとBの鉱石をこすり合わせたとき、どっちに傷がつくか、というものです。
このモース硬度は一番硬いものをダイヤモンドの10、最も柔らかいものの基準を滑石として10段階に表記します。例えば水晶は硬度7になりますが、これに他の鉱石をこすり合わせたとき、お互いに同じくらい傷がつけば、この鉱物の硬度は7である、とされるわけです。
同じく水晶をダイヤモンドにこすりつけた場合、水晶がほぼ一方的に傷つくので、ダイヤモンドの方が硬い、となるわけですね。ちなみに、段階をさらに15段階に引き上げた新モース硬度という基準でも、ダイヤモンドは硬度15と最硬を誇ります。
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モース硬度の功罪
ただし、モース硬度はあくまでこすり合わせた場合であり、他のものと激しくぶつけ合った場合や、圧力をかけて押し込んだ場合とは、また違うということです。たしかに、こういった方法でもダイヤモンドはかなりの硬度を示すのですが、衝撃や圧力の加え方によっては砕けることもあるのです。
例えば、上からハンマーで殴るといった単純な衝撃に関しては、ダイヤモンドよりルビーあたりの方が丈夫なほどです。モース硬度は簡便な指標ではありますが、絶対的なものではない、ということを覚えてくださいね。
ダイヤモンドが硬いわけ
それにしてもダイヤモンドが硬いのは間違いないことで、同じ炭素を元にしたほかの鉱物と比べて、格段に丈夫です。では、どうしてそんなにダイヤモンドが硬いのか、という話になると、かなり難しい話になってしまいますので大雑把に説明してみますね。
ダイヤモンドは炭素原子の集合体なのですが、元素同士の結合間隔、方向がどの方向から見ても一定で、ゆがみがありません。そのため炭素原子同士の結びつきが異様に強いのです。それがダイヤモンドの硬い最大の理由です。
ダイヤモンドのへき開性
このように強力な結びつきを誇るダイヤモンドですが、ある決まった方向に対して割れやすいという弱点があります。これをへき開性と呼びます。
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例えるならキノコみたいなもので、軸をたてに引っ張ってもそう千切れませんが、繊維に沿って引っ張ってやればあっさり裂けてしまいますね。ダイヤモンドもその"繊維"にそって、衝撃を上手く与えれば割ることも出来てしまうのです。
ダイヤモンドの安定性
物が丈夫である定義には、単純な硬さ、衝撃に対する強さのほかにもう1つ、安定性があります。ダイヤモンドの場合、単純な硬さは最高、衝撃の耐性(強靭性)はかなり高い数値を示します。
では、安定性についてはどうでしょうか。この場合の安定性とは「ある物質の、他の影響を受けにくさ」ということです。
例えば、鉄はそれなりに硬いのですが、酸素と反応して錆びたり、酸に溶けたりします。金は鉄より柔らかいですが、錆びることはなく、ほとんどの酸にも溶けません。この場合は、金の方がより安定性が高いということになるのです。
では本題のダイヤモンドですが、ダイヤモンドは酸にはまず溶けることはなく、日光や酸素などにも抜群の安定性を誇ります。ダイヤモンドが永遠であるという神話は、なによりもこの高い安定性によるものなのです。
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ダイヤモンドが輝くわけ
ブリリアント・カットというダイヤモンドのカット方法をご存知でしょうか。ダイヤモンドの基本的なカット方法です。ダイヤモンドの美しさ、輝きを最も引き立てるとされています。この形を模したものがトランプのダイヤであり、そこからさまざまなひし形のことをダイヤモンドというようになったのです。
さて、ダイヤモンドが他の宝石と一線を画すのが光を当てたときの輝き具合。これはダイヤモンドの光の屈折率が高いからになります。ダイヤモンドに光を当てると、一部は表面に直接反射し、一部は内部の屈折率からダイヤの中で反射しかえし、さらに残りは光を分解してプリズム反射を見せるのです。
3種類の光が反射するからこそ、ダイヤモンドは他に類を見ない輝きを持っているのですね。また、ダイヤモンドの品質に"内包物"の項目があるのは、この輝きに影響を与えるからです。
ダイヤモンドが燃えないわけ
ダイヤモンドは、炭素の塊なので火をつけると燃えそうですね。ただし、マッチで火をつけたくらいでは燃えません。では、もっと大規模でしかも高温に熱した場合はどうなるでしょう。その場合、徐々に小さくなっていき、最後には消えてしまうのです。
つまり、燃えるのではなく、消えてしまうわけです。なんと、加熱を続けると8〜900度前後を境に気化してしまい、ただの二酸化炭素に変わってしまうのです。このくらいの温度は、条件次第では火事でも起こりうるため、家宝のダイヤがただの二酸化炭素に変わり果てることがあると言うことです。
また、ダイヤモンドの熱伝導率は意外に高く、あっという間に高温になります。炭素原子が密に、しかもきちんと並んでいるために熱を伝えやすいのですね。
ダイヤモンドと油
ダイヤモンドを扱う人が、白い手袋とピンセットでダイヤを扱うのは、別にかっこつけているからではありません。ダイヤモンドは油と非常に相性がよく、大変くっつきやすいのです。これを親油性といいます。
そのため、手の脂がダイヤモンドにくっつかないように手袋をはめているわけです。といってもダイヤモンドの安定性は抜群ですから、例え脂がついたとしても洗えない事はありません。しかし、時間がたつと落ちにくくなるし、台座を傷めることもありえます。
基本的には油を近づけないようにするのが懸命ですね。ちなみに、ダイヤモンドの採掘場ではこの性質を利用して、ダイヤを選別する際には、グリースを塗ったテーブルに載せて、くっつけて選別するという方法を取ることもあります。
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